2010/03/05発行 ジャピオン掲載記事
阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立、渡米し、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『祝福を受けた不安』『ゆるみ力』『気づいた人はうまくいく!』『HOPE!』などの著書・訳書、講演活動も多数。www.joywow.jp
何でもない日でビジネスは決まる
何でもない日こそ
アニメ映画『不思議の国のアリス』で登場人物たちが、「何でもない日バンザイ!」という歌を歌い、踊るシーンがあります。作品にあふれる不条理感が増す曲なのですが、先日、久しぶりに見ていて、「ひょっとするとこれは経営の要諦かもしれない」と思いつきました。
クリスマスカードや年賀状は、どんな時代になってももらってうれしいものですね。でも、こんなものの見方もありますよ、というのが今回のお話。
シーズンにカードを出すのは当たり前で、受け取る側も、たくさんのカードの中の1枚としてしか、あなたのカードを見てくれません。個人宛ではなく会社や組織宛にカードを出した場合、カードの隅に穴を開けられ、リングで留め、部署内で回覧されて終わりです(だから、カードの宛名は必ず会社宛ではなく、個人宛にしましょう)。カードデザインで目立つ方法もありますが、それにも限度があるでしょう。
では、どうするか。何でもない日に、カードを出すのです。それも、ただ出すだけではなく、出し続ける。コツコツと。
彼女が儲け続ける理由
知人の日本料理店の女将は、毎月10日過ぎにお客様へハガキを出しています。内容はちょっとした日常の話題ですが、ホリデーシーズンじゃないからこそ、ほかのハガキに埋もれずに、「読んでみようか」と思います。
私の主宰するJOYWOW塾塾生Aさんは女性経営者。リアル店舗のほか、二つのネットショップを運営し、さらに今年、三つめのネットショップブランドを立ち上げました。デフレでモノの価格が超低空飛行の日本にあって、低価格を売りにすることなく、各ブランド本来の提供価値をしっかり発信することによって、どの店舗も儲かっています。新ブランドは立ち上げから絶好調ですし、既存のショップも前年比30%、20%の伸び。Aさんのブランド戦略の確かさや社員全員のチームとしての熱い団結力がその理由ですが、私の見るところ、それだけではありません。それらのグッドパフォーマンスを支えるベースとしての、「Aさんのコツコツした努力」があってのこと。
つい先月、Aさんがオフィスへ遊びに立ち寄ってくれまして、雑談をしていた時、「栗で作った焼酎がある」話題になりました。「珍しいですね」と返していたのですが、その数日後、宅配便で荷物が。開けると、話題にしていた栗焼酎です。中には手書きメモ(とってもきれいな一筆箋)。
「先日お話していた栗75%の焼酎です! 是非ロックでお飲みくださいね〜。香りが広がります。4万10時間(4年7カ月)も洞窟で貯蔵されたレアもので、『ガラスびんデザインアワード』で最優秀賞を…」、云々と書かれています。
その日は別に記念日でも何でもありません。何でもない日に届いたからこそ、その日JOYWOWオフィスでは、「4年7カ月!」「四国の四万十川とひっかけているんでしょうね」「Aさんのサイトって、どんなショップだっけ?」とAさんの話題で持ち切り。Aさんが儲け続ける理由は、この「何でもない日を生かすコツコツした努力」なのです。
努力の積み重ね
めいめい(冥冥)の志なき者は、
しょうしょう(昭昭)の明なく、
こんこんの事なき者は、
かくかく(赫赫)の功なし
『荀子(じゅんし)』の言葉です。意味は、「内に秘めた志なき者に輝かしい名誉など表れてこない。誰も見ていないところで、コツコツと努力を積み重ねることのない者に明らかな功績など表れてこない」。
「誰も見ていないところで」と言いますが、お客様は必ず見ています。買っていただいたら、その日のうちにお礼のカードを出す。何かお客様の気に入りそうな新商品が入荷したら、時を待たずお知らせする。ただカードを出せば良いというのではなく、あくまでお客様を固有名詞として知っていて、マン・ツー・マンで接客するつもりで。そのために、日頃からお客様一人ひとりについて、どれだけ知っているか、知ろうとしているか、が決め手になります。1年365日の内、クリスマスやバレンタインなどのイベントデーより、むしろ何でもない日の方が多いですよね? ビジネスに生かさない手はありません。
何でもない日バンザイ!
今週のおすすめビジネス書
1987年より、「毎日1冊ビジネス書を読む」ことを自らに課している“ビジネス書の目利き”阪本啓一が、おすすめ本を紹介!
新しい経営手法と経営環境の本
『夢は、無計画のほうが実現する』
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『仕事道楽 スタジオジブリの現場』
(鈴木敏夫/岩波新書)
高畑勲、宮崎駿の両監督ほか、異能の人々が集まるスタジオジブリ。創造の現場を、ジブリ・プロデューサーが語る!
『JOYWOW「あり方」の教科書』
(阪本啓一ほか/JOYWOW直販)
ビジネスに関する個性派コンサル集団、JOYWOW著。不安を吹き飛ばし、ポジティブに生きるための「あり方」が身につく知恵と実践の書。