主な労働ビザであるH1ビザの取得が厳しくなる昨今、日本人留学生や転職希望者の間で、日本に帰って就職する「Jターン」組が増えているという。そこで、コンサルティング会社「ベリタス・コンサルティング」社長の坂尾晃司氏に、日本における日本人留学生の就職状況について聞いた。
Q:日本は今バブル期以来の求人市場活況と聞きますが、海外からのリターン就職希望者にも有利な状況なのでしょうか?
坂尾社長(以下、坂尾) はい、求人数は多いです。少子化の影響で人材が足りない。「人手は足りているが人材がいない」のが実態です。特に中間マネジメントができる人と、若手で何でもやれる人は奪い合いになります。
Q:海外での留学や実務の経験を生かした就職が可能でしょうか?
坂尾 最新のコンピューター技術や一流大学のMBAを持っている人は、難なく大企業に就職できるので心配いりません。注意が必要なのは英語留学生や、大学でも一般教養的な学問を修めた人たちです。
Q:日本企業はそのような人たちをあまり望んでいない?
坂尾 必ずしも、そういうわけではありません。行政からの要請もあって、企業側も「多様化」「グローバル化」という見地から、海外経験者の採用に積極的な姿勢を取っています。ところが、現実的には受け入れの体制が未成熟。古い国内志向の残る製造業やサービス業では、部下の海外経験を十分に生かせる上司は少ないのです。通常の新卒と同じような扱いを受けて、同じような配属をされるケースが多いですね。
Q:なるほど。Jターン就職者はその辺の日本的しきたりをよく理解する必要がありますね。
坂尾 その通りです。一方、企業側にも、「海外経験者は権利の主張が強く『空気が読めない人間』が多い」との先入観が根強いことは要注意です。
Q:具体的にはどのような戦略を持って就職活動するべきでしょうか?
坂尾 海外在住者にはナマの情報が入りにくい。インターネットや就職斡旋会社の情報、その他を駆使して、徹底的に企業情報を収集すること。できれば日本にも足を運んで会社回りをすべきです。
Q:英語力や国際経験は武器になりますか?
坂尾 意外に英語力は求められていませんね。留学しても英語ができない人がゴロゴロいるのを採用担当者は百も承知です。だから、 面接で英語まじりに話すなど、中途半端な英語力を披露するのはマイナス。会話の頭に「ア〜ム」といった、英語風にしゃべるクセも禁物です。
Q:では、留学や海外経験者に求められるものは?
坂尾 海外で一定期間、一人で生活したことによって培われたバイタリティーとチャレンジ精神でしょう。企業が求める「グローバル人材」とは、その場限りではない持続性のある行動力、新しい環境に対する適応力、そして自分を保ちつつ相手を容認できる柔軟性、それに広い視野と体力が備わった人間なのです。
Q:ところで、求職市場は海外からの転職者にとってもホットと言えますか?
坂尾 現時点では中途採用も盛んです。ただし海外勤務経験者でも、実は意外に専門性は問われていないケースが多いのです。よほどマルチな経験を積んだ人でない限り、駐在経験が直接生かせるケースは稀です。企業の本音は、若くてポテンシャルのある人であれば、専門性の有無に関わらず採用したいということです。
Q:Jターン就職希望者に坂尾さんがすすめる業種は?
坂尾 伝統的な日本の企業もチャレンジする価値はありますが、やはりベンチャー企業ではないでしょうか? アメリカの合理的なマインドに親近感を覚える人には、新しくて社長も若く、成長盛りの企業の方がチャンスも多く、充実感があると思います。例えば、ゲーム、アニメ、ファッションといった文化業界が今は世界をリードしているので、注目株と言えるでしょう。やはり新しい業界の方が、多様な人材を活用するマインドを持っています。
Q:外資系企業という選択肢はいかがでしょうか?
坂尾 外資系企業も積極的に人材を求めています。こちらはアメリカと同じ感覚の就職活動でアプローチするのがいいでしょう。ただし、企業によっては部署のボスがひんぱんに変わり、その度に方針や人員の布陣がクルクル変わったりして、就職後の定着率が悪いという具体例も結構あります。また、一度外資系の会社で働き始めると、そこから日本企業への転職はハードルが上がります。そのくらい違うカルチャーなので、気をつけましょう。
Q:女性のJターン就職について特徴的なことはありますか?
坂尾 伝統的な日本企業では、非常に厳しいと思います。各社「女性活用推進室」などを設けて採用を促進しようとしていますが、本当に成功しているのは東京ガスなど、限られた会社だけです。女性には、やはり外資系を推薦しますね。良くも悪くも外資は実力主義だし、企業側にも、採用したからには「ちゃんと活用しなくては」との意識があります。
Q:今日は、貴重なお話をありがとうございました。最後にアドバイスはありますか?
坂尾 結構シビアな話に終始してしまいましたが、最初に申し上げた通り、日本の求人市場がアクティブなことは確かです。ただ、企業側のニーズにマッチした就職でないと長続きしないし、お互いにハッピーになれないという点に十分気をつけて、就職活動をがんばるのが一番だと思います。 |