アメリカでの健康と医療

第5回 まったく別物?! 子宮頸がんと子宮体がん

在米日本人の健康と医療をサポートする「FLAT・ふらっと」がお届けする連載。アメリカで健康な生活を送るために役立つ情報を発信します。


「FLAT・ふらっと」 運営メンバーの産婦人科医、鈴木幸雄です。FLATは在米日本人のみなさまの健康と医療を支える団体です。前進のJapanese SHAREの活動を継続、そしてさらに充実させていきます。今回はみなさまに改めて知ってほしい子宮がんの基本を解説します。

今回のポイント!

•子宮がんは2つ。子宮頸がんと子宮体がん。まったく別物!
•子宮頸がんの予防は2本柱! 「子どもたちへのHPVワクチン」と「大人の子宮頸がん検診」(Papテスト/子宮頸がん細胞診は3年毎、HPV検査は5年毎に受診)。
•子宮体がんのがん検診は基本的に不要! とにかく閉経後の不正出血に要注意。ほとんどは不正出血から早期発見可能。

Q:子宮がんにはどのような種類がありますか?
A:子宮がんには主に子宮頸がんと子宮体がんの2種類があり、なりやすい年齢が違います。
子宮頸がん(Cervical Cancer):子宮の入り口(頸部)にできるもので、日本では年間約1万 1000人(がんになる前の状態である「上皮内がん・高度異形成」を含めると約5万人)の新規患者がいます。がんの直前状態まで含めると、40歳までにかかるがんの約半分が子宮頸がんです。米国でも約1万4000人の年間新規患者がいます。
子宮体がん(Endometrial Cancer):子宮体部の内側にある子宮内膜にできるがんです。妊娠した場合赤ちゃんが育つ場所である子宮体部です。子宮頸がんとは異なり、40代後半から増えてきます。世界中で増えており、米国では年間の新規患者数が7万人に近づいています

Q:子宮頸がんの原因と予防方法は?
A:子宮頸がんの原因の95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは性交渉によって感染するウイルスですが、ほとんどの人が一生に一度は感染する一般的なウイルスです。しかし、このがんは一次予防(病気にかからないようにすること)が可能で、15~16歳までにHPVワクチンを接種することで感染予防ができます。また、二次予防(早期発見)のためのスクリーニング検査(PapテストやHPV検査)もあり、ワクチンと検診の組み合わせでほぼ予防することが可能です。予防が成功している豪州などでは劇的に子宮頸がん患者が減り、制圧宣言も出ています

Q:子宮体がんの原因と予防方法は?
A:特定の原因はありませんが、出産経験のない方や肥満症の方などでは子宮体がんになりやすいとされています。早期発見のための検査は現在のところありません。ほとんどの場合は閉経後の不正出血で発見されます。その段階では早期がんであることがほとんどです。早期に発見されると治りやすく、予後も良いがんです。閉経後の出血に気づいたら早めの婦人科の診察を受けることが重要です。また子宮体がんのうち5%は遺伝性のタイプで、大腸がんなどになりやすいリンチ症候群(Lynch Syndrome)がその代表です。ご家族や親せきに大腸がんが多い方はプライマリケアドクターに相談してみましょう。

良く聞かれる質問

Q:子宮頸がんは遺伝しますか?
A:子宮頸がんは遺伝しません。95%以上の原因がHPVであることが分かっていますので、個人個人がきちんとHPVワクチンとスクリーニング検査によって予防することが大切です。

Q:子宮体がんのがん検診は受けた方が良いのでしょうか?
A:子宮体がんのスクリーニング検査は受ける必要はありません。子宮内部からの細胞の検査はありますが正確性が低いため推奨されていません。不正出血の自覚で早期発見が可能です。

 

今週の執筆者

鈴木幸雄 婦人科腫瘍専門医

医学博士、産婦人科専門医・指導医、細胞診専門医、腹腔鏡技術認定医。これまで多くの婦人科がん患者の手術や化学療法を担当し、現在はコロンビア大学メディカルセンター産婦人科博士研究員として臨床研究中。在米日本人の健康と医療を支える「FLAT」の理事。Twitter: @yetii18


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