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人種や性的マイノリティー、環境問題などを巡り分断がますます広がる米国社会。LGBTQの人権にも大きく関わる11月の大統領選挙まで5カ月、恒例のプライド月間が始まった。(取材・文/加藤麻美、協力/HRSハッピーマン)
裾野広がる性の多様性 未来は明るいと信じて!
ゲイの視点で美術館のLGBTQツアーを企画しガイドも務めるHRSハッピーマンさんに、同ツアーや次世代を担うLGBTQユース支援のプログラムなどについて聞いた。
─メトロポリタン美術館で催行中のツアー「もうひとつのメトロポリタン美術館」とは? 始めたきっかけは?
同性愛が当たり前だった古代ギリシャから、ミケランジェロをはじめとした天才アーティストの孤独、オセアニアの民族文化まで、知られざるLGBTQの作品とその歴史的背景を紹介するツアーです。
当初はストーン・ウォール・インやシェリダンスクエアなどの有名なバーとモニュメントを巡るベタなツアーを考えたのですが、ガイドブックに載っているようなものではつまらないし(笑)。作品を通して人類がLGBTQをどう扱ってきたかを知れば、現在まで続くLGBTQへの偏見や差別、歪みの原因が見えてきます。教育学を専攻した立場から、保護者や教育関係の人たちに参加していただけるとさらにうれしいです。
─ヘイトクライムが多発したり図書館からLGBTQ関連書籍が消えたりと、現在の米国はマイノリティーの人権問題で揺れていますね。
白人至上主義者を擁護する発言を繰り返したトランプ政権下ではヘイトクライムも多発、最高裁判所判事の保守・リベラルのバランスも崩れています。11月の大統領選でトランプ氏が返り咲いたら、さらに保守化する可能性が高い。
でも希望はありますよ。ピュー・リサーチ・センターの2022年の報告によれば、米国全体の7%、30歳以下では17%がLGBTQと自認、つまり若い世代ほどLGBTQの割合が高いという結果が出ており、性の多様性は着実に裾野を広げつつあるんです。しかも若いジェネレーションはどんどん発言していますしね。こうした声が今後の選挙により強く反映されていくと思います。
─教育学を専攻した立場から、LGBTQのユースにおすすめのプログラムはありますか?
社交的でクリエーティブなことが好きなクイアと、トランスのユースにはブルックリン美術館主催のプログラム「インターゼクションズ(InterseXtions)」はいかがでしょうか?
14〜19歳を対象にした有給のインターンシップで、同美術館と協力しながらアートを通した、アクティビストの視点とネットワーキングやコラボレーション、タイムマネジメントのスキルを身に着け、イベントの計画から実施までを一貫して行う超実践型のプログラムです。LGBTQのユースたちもここでなら一生の友人に出会えるかもしれません。
─ご自身の現在進行中のプロジェクトは?
大人たちの配慮に欠けた判断によって影響を受けるLGBTQのユースに向けて「人生のヒント」となるようなメッセージを集めて少しずつインスタに投稿しています。アーティストやポルノスター、元ディーラーとコメントテーターの幅が広いのが特徴です。
LGBTQの間でも人種問題は存在するし、私たちがどれだけお互いを理解し受け入れられるのか、いつも試されている。どんなときもハートのある選択をしたいものです。
『The Musicians( 若き音楽家たち)』
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ(1571ー1610、イタリア)
光と影のコントラストを用いる劇的な手法でバロック絵画に多大な影響を与えたカラヴァッジオは、才能に恵まれながらも賭博好きで殺人を犯すなど波瀾万丈な人生を送った。セクシャリティーは謎とされるが、1597年作の『The Musicians』は彼独自のフェティシズムとエロスが強く感じられる名作。
<話を聞いた人>
HRS ハッピーマン
ニューヨークのホスピタリティー業界で広告制作業務に携わった後、不動産業界に転身。エージェント業務の傍ら商業ガイド、ライターとしても活動。日本で初等教育学を学び、ニューヨークでM.F.A(. アート修士号)を取得。東京都出身。メトロポリタン美術館のLGBTQツアーの問い合わせはキュートラベル(cueintlny.com)まで。
gohappyman.com / Instagram: @hrshappyman
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