日本への本帰国前後の各種手続き

〈第4回〉帰国後~将来の手続きについて

前回(7月5日号)では帰国直後に必要となる主な重要手続きについて紹介しました。今回は帰国して一旦落ち着いた後、これからの日本生活で必要となる短期~中長期の手続きについて紹介します。

自動車運転免許の書換

米国の運転免許証保有者は、簡易な試験(知識確認、技能確認)だけで日本の運転免許証に書き換えることができます。さらにWA州、OH州、VA州、HI州、MD州はこの簡易試験も免除されます。手続きは各都道府県の運転免許試験場で行いますが、指定機関(米大使館、日本自動車連盟など)による米国免許証の翻訳文が必要となるなど手続きには手間がかかります。また各運転免許試験場も混雑しており試験は予約制となっていて、手続き完了まで数カ月かかることもあります。

なお、ここ最近高齢者ドライバーによる交通事故が増加しており、高齢者の免許返納手続きを促進する目的で支援活動なども行われています。日本は公共交通機関が発達していますし、返納者への特典もあることから、選択肢の一つとして検討するのも良いでしょう(※1)。

日米年金に関する手続き

【A.受給中の年金】

年金受給者として登録されている住所、および年金の振込先銀行口座を日本に変更する場合は、変更届を提出します。変更不要な方は必要ありません。

1.日本の年金

居住地にある最寄りの日本年金機構または共済組合、企業年金などの各年金の事務所で対応してくれます。忙しい場合は、代理人または郵送による変更手続きも可能です。必要書類は事前に電話で確認するようにしましょう。

2.米国公的年金(Social Security Benefit

駐日米国大使館へ変更用の書類を郵送にて提出します。手続きの流れとしては次の通りです。

①米国大使館年金課のウェブサイトの受付メニューより、変更希望の旨と個人情報を送信。

②提出用のフォームをダウンロードし、記入の上、同大使館宛てに郵送する旨の返信を受け取る。

③新しい住所や口座情報を記入し発送。なお、このフォームには銀行担当者による署名やメディケアの継続有無などの記入箇所もあります。

3.その他の米国年金(政府/州/軍関係、企業年金など)

各種年金については、米国外居住者に対し送金対応していないものがあるので注意が必要です。必ず帰国前に確認するようにして下さい。もし受給権が喪失されるのであれば、米国に住所を残しておく選択肢もあります。また、米国外向けは送金ではなく小切手(Check)での郵送のみ対応というケースもあります。日本では小切手の現金化は現在1カ所の銀行のみで対応している状況なので注意が必要です。

【B.今後受給申請する年金】

1.米国公的年金

まだ年金の受給開始年齢に達していない人が帰国後に受給申請する場合は、全国にある日本年金機構の年金事務所で書類の提出が可能です。申請書も日本語対応で、日本人の窓口担当者が申請に対応してくれるのでとても便利です。ただし年金事務所では書類の受付処理だけで、その後、米国大使館年金課へ転送されます。場合によっては同担当者から面談の要請があることもあります。

2.その他の米国年金

前述の変更手続き同様、受給権の継続の有無、年金受取方法などを帰国前に運営団体に手続き方法を確認するようにして下さい。

税務(確定申告)

税金といっても色々な種類がありますが、日本帰国者にとって両国にまたがることになるので複雑です。特に申告すべき税金のうち、代表的なものは毎年の確定申告ですが、その他贈与税、相続税、資産税なども含め、日米どちらの国税局へ申告すべきか、対象となる所得の範囲など専門的で難しいので、会計士、税理士などの専門家と相談しましょう。必要に応じて日米それぞれに個別の専門家へ相談、依頼します。

在留資格の更新手続き(米国籍取得者)

前号でも紹介しましたが、外国人(日本国籍以外)が日本で中長期に居住者となるには、在留資格の取得が必要です。取得者が日本へ入国すると在留カードが身分証として渡されますが、この在留カードには有効期限があります。主に1、3、5年のいずれかなのですが、有効期限後も引き続き日本に居住する場合は、当然ながら更新手続きが必要です。

更新手続きの際は、再度審査を受けることになりますが、日本滞在中に各種社会保険料や、税金の納付状況、素行(法律違反など)の有無、日本国外滞在日数などが審査に影響することもありますので、専門家にも相談しながら日本のルールに従って暮らすよう心がけましょう。

いかがでしょうか? この他にも、老後に帰国された方は終活(介護や相続など)に向けた準備や手続きが必要になるかもしれません。そうした情報についてはまた別の機会に紹介したいと思います。

〈備考〉

※1:高齢運転者支援ウェブサイト

zensiren.or.jp/kourei/return/relist.html


蓑田透 ライフメイツ代表
「海外居住者専用日本帰国・相続・年金・金融コンサルタント」として、老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、介護、不動産、就労・起業、税務、金融などの相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種専門手続き(親の介護、相続、税務、金融、年金、国籍/戸籍、行政など)の代行、コンサルティングを行う。幅広い知識とわかりやすい解説、専門家
ネットワークと豊富な実務経験で海外居住者から信頼が厚い。
ウェブサイト: www.life-mates.jp

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