日本への本帰国前後の各種手続き

〈第5回〉日本の医療保険・介護保険制度について

日本には公的社会保障制度として米国同様医療保険制度がありますが、加えて介護保険制度もあります(米国には介護保険は無し)。そこで今回はこの日本の医療・介護保険制度について紹介します。

1.両制度の概要と加入対象者

よく両制度を混同されている人がいますが、二つの保険制度は別々の制度です。医療保険(日本では「健康保険」と言われていますが)は、心身に不調、傷病が生じ医療機関で診察、治療、入院等を受けた場合に利用できます。米国の制度(メディケア)と異なることは国民全員(出生後から生涯にわたり)加入できる点(※1)にあります。同じ医療保険でも年齢や雇用形態により後期高齢者医療制度、健康保険制度、国民健康保険制度と区分されますが、内容はほぼ同じです。

一方介護保険は40歳以降の国民が全員加入できます(※1)が、傷病や加齢により自分一人で日常生活ができなくなり、介護を受ける必要がある状態にならなければ介護サービスを受けることができません。そのため実際に介護が必要かどうか、どの程度の介護保険サービスが必要かを事前に審査することが求められます。

2.医療保険制度~受けられるサービス

加入者(被保険者)が医療機関で医療サービスを受けた際、かかった医療費のうち一定の額が健康保険から補助され、残りの分を加入者自身が支払います。自身で支払う自己負担分は75歳以上が1割、就学未満および70~75歳が2割、その他現役世代は3割負担となります(※3)。医療費だけでなく薬局で処方される薬剤にも適用され、ほぼ全国で利用できます。

3.介護保険制度~受けられるサービスと介護認定

介護保険では傷病や加齢により日常生活が難しくなり、介護事業者のサービスを利用した場合にその介護費用を介護保険から補助され、自己負担分は1割となります(※3)。そのため介護が必要な状態となっているか事前に介護認定を受ける必要があります。認定は市町村役場で申込み、医師の診断書と面談による審査を受けます。その結果介護の必要度合いに応じた基準(※4)ごとの認定を受けます。この基準により給付額が変わりますし、また介護の必要性が認められなければ給付サービスは利用できません。

介護事業者が提供する介護サービスは食事、排泄、衣服の着脱、掃除、歩行の支え、など日常生活に関わるものとなりますが、この中からどのサービスを提供するかは介護レベルによって変わります。一方サービスを受ける場所によって①居宅サービス、②地域密着型サービス、③施設サービス、に分けられます。①は介護サービス事業者に来てもらって自宅でサービスを受ける形態、③は介護施設へ入所してサービスを受ける形態、②は必要に応じて施設に通所したり緊急コールで事業者に自宅へ訪問してもらうなどの形態となります。また①の居宅サービスでの利用については、自宅でもなるべく不自由なく生活できるよう介護福祉用具の購入や自宅の改修(スロープや手すりの設置等)といったサービスが含まれます。

4.保険料の支払い

医療介護保険とも海外からの帰国後、住民登録手続き終了後すぐに加入できます。そして加入した日から被保険者としてどちらのサービスも利用できます(介護保険は認定が必要ですが、一方で加入した月からの保険料の支払いが発生します。毎月の保険料は前年度の所得に応じて算出されます。

いかがでしょうか? 特に介護保険については、今後ご自身が日本へ帰国した場合だけでなく日本に高齢の親がいる場合の情報としても参考にして下さい。

※1:なお加入は必須であり加入者全員の毎月保険料の支払い義務が発生します(免除制度有り)

※2:第1号被保険者は特殊な疾病により介護が必要となった場合にのみ適用されます

※3:未就学者、高齢者でも現役世代同様の所得者は、自己負担率2〜3割(国の補助は7〜8割)となります

※4:【要支援1~2、要介護1~5】の7段階の基準に区分されます


蓑田透 ライフメイツ代表
「海外居住者専用日本帰国・相続・年金・金融コンサルタント」として、老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、介護、不動産、就労・起業、税務、金融などの相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種専門手続き(親の介護、相続、税務、金融、年金、国籍/戸籍、行政など)の代行、コンサルティングを行う。幅広い知識とわかりやすい解説、専門家
ネットワークと豊富な実務経験で海外居住者から信頼が厚い。
ウェブサイト: www.life-mates.jp

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