巻頭特集

この夏はアートを存分に満喫しよう!

さまざまなアートを身近に触れられる芸術の街、ニューヨーク。話題のゴッホ展をはじめ、いよいよ全面オープンとなった市内の美術館でも、夏に向けてさまざまな展示会が始まっている。この夏はアートを存分に満喫しよう! (取材・文/キム・クンミ)


クイーンズ美術館キュレーターに聞く
ニューヨークならではのアートを楽しむ術

15日、ニューヨーク州で各施設の収容制限がほぼ解除され、去年はお預けとなったニューヨークの夏がいよいよ戻ってきそうだ。この夏は、色鮮やかな絵画の世界を歩く体験型展示「イマーシブ・ヴァン・ゴッホ」展が好評を得ている他、屋外でも数多くのアートワークやパフォーマンスが予定され、目移りするほどだ。そこで、クイーンズ美術館で学芸部ディレクターを務めるキュレーターの岩崎仁美さんにアートを楽しむポイントを伺った。

美術館のつのタイプ

美術館には大きく二種類ある。一つは収蔵品に重きをおいた美術館で、メトロポリタン美術館やフリックコレクション、MoMAなどが代表的。またもう一つは移り変わる今の時代の芸術を見せる美術館で、クイーンズ美術館(以下、QMA)はこちらに当たる。

アメリカ国内で最も人種の多様性があるといわれるクイーンズ区は、住民が話す言語も157から168種類ほどあるそうだ。そういった背景から同館も人種や文化の多様性をテーマにしたQMAならではの現代美術展、教育プログラムやイベントを提供することが多いという。

収蔵品が充実している美術館も、新しい芸術に触れることができる美術館も、時代ごとに変わっていく世界の名作を堪能することができる。それぞれの美術館が提供する異なるタイプの芸術にアクセスできるのも、美術館が密集するニューヨークならではの楽しみ方だ。

 

フラッシング・メドウ・コロナ・パーク内、巨大な地球儀のモニュメント「ユニスフィア」の目の前にあるのがクイーンズ美術館

 

時代を取り込む展示

岩崎さんが勤めるQMAは昨年7月からフードパントリーを始めた。食材を供給する場所として美術館を解放し、毎週500以上の世帯に食材を配布している。芸術とはまったく関係ない活動にも思えるが、フードパントリーがきっかけでそれまで美術館とは縁のなかった地元住民が訪れるようになったという。

この活動は、同館の現在の新たな取り組みと連動している。美術館の存在意義を問い直そうとするその取り組みは、公募で選んだ6人のアーティストや地域共同体をサポートする組織や環境擁護団体など、27の参加団体、個人と共に美術館がどのようにあるべきかを模索し、アーティストを育て、展示会や教育プログラムなどに結実させていくという。

同館では7月30日まで、1858年に建設されたリッジウッド貯水池の160年間の変化をたどる展示や当地で活躍するアーティスト、中国系アメリカ人作家シドニー・シェンの没入型インスタレーション「ストレンジ・バット・トゥルー」を8月22日まで展示している。さらに秋には夏から続く取り組みの成果となる展示も始まるというので、こちらも注目だ。

 

 

 

岩崎仁美さん
クイーンズ美術館学芸部ディレクター/キュレーター

ニューヨーク大学大学院美術館学部にて修士課程修了後、ニューヨーク近代美術館でフェローシップ、ニューミュージアムやインディペンデント・キュレーターズ・インターナショナルでインターンシップを経たのち、1996年よりクイーンズ美術館勤務。
queensmuseum.org

 

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