歴史的名盤レコードを掘る! 今週の1枚

第9回 今週のレコード:Heaven Beach(ANRI)

今、米国の若い世代の間で1970年代後半から80年代にかけて日本で大流行したシティーポップを中心に熱狂的なファンが増えている。ブルックリン区に店を構え、レアものを揃えるフェイスレコードの間宮さんが選ぶ名曲を通して、その魅力を探ってみたい。


爽快な西海岸サウンドと杏里の夏のイメージを決定づけた名作

今回紹介する『Heaven Beach』は、角松敏生を作詞・作曲に起用した『二番目のaffair』や、『Fly By Day』など名曲揃い。若き日の小林武史や神田広美も作詞として参加しており、メロウで心地よいナンバーやミドルテンポな曲が収録された聞きやすい1枚。中でも『Last Summer Whisper』は、人気の若手R&Bシンガー・Jenevieveが自身の曲『BabyPowder』でサンプリングし話題になったことも記憶に新しい。オリジナル盤は高額だが、イエローヴァイナル盤は昨年再発され、手に入りやすい。とある客が日本を旅行中、レコード店でオリジナル盤を探したが見つからずニューヨークの弊店に来て購入したことがあった。円安も相まって、世界中から訪れる旅行客が、日本でレコードを大量買いしているそうだ。杏里は今も現役バリバリで西海岸でライブすることも。いつか東海岸にも来てほしい、と切に願うこの夏。


フェイスレコード

2018年にウィリアムズバーグ地区にオープン(営業は木曜日から日曜日の午後1時〜7時)。シティーポップをはじめ、山下達郎、竹内まりや、坂本龍一、YMOなどに代表される日本の音楽を中心に、ヒップホップや日本盤のジャズロックなども豊富に取り扱う。在庫数は8000枚、新入荷は毎週金曜日。レコードの買い取りも受け付け中。1994年に東京で創業し、現在は日本全国に全6店舗展開中。


間宮祐一

横浜市出身。脱サラし、2015年からニューヨーク在住。18年に同店をオープン。自身も筋金入りのレコードコレクター。また、ヒップホップの楽曲制作も行い、2020年に客演に『Freddie Gibbs』(グラミー賞ノミネーター)を迎えたシングルレコードを発表。座右の銘は「NO VINYL NO LIFE」。

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