心と体のメンテナンス

SHAREの「米国医療システム知恵袋」想定外の医療請求が来たら(後編)

想定外の医療請求が来たら
支払い義務のない請求も!

Q. バランスビルとサプライズビルとは?

A. 

お答えする前に言っておきたいのは、アメリカの医療費請求には本当に気をつけてほしいということです。患者に支払い義務がない場合も多いことと、支払い義務はあっても事情を説明すればかなり減額され、分割払いもできるということを知っておいてください。

まず、バランスビル(balance bill)とは「差額請求」のことです。例えば、私が何かの治療を受け、医師が保険会社に1000ドルの請求をしたとします。保険会社はそのうちの800ドルを医師に支払い、医師(病院)がその差額の200ドルを患者である私に請求することを指します。意外に頻発するので、受け取った患者はびっくりしますが、ニューヨーク州では2019年4月1日から差額請求は違法になりました。患者に支払い義務はありません。

サプライズビル(surprise bill)とは、その名の通り「びっくり請求」とでも言いましょうか。患者の知らない間に、患者の保険適用外の医師や医療機関が治療をし、その費用が忘れたころに患者に請求されることを言います。例えば、私が交通事故に遭い意識を失い、救急車で運ばれ、麻酔をして手術を受けたとします。退院して元気になったころに、保険適用外の執刀医、麻酔医などから送られてくる高額請求書がサプライズビルです。

意識不明の患者の緊急手術に保険のネットワーク内も外もなく、このような請求をしたのでは患者に負担になると、全米各州で議論されているところです。これも、幸いにもニューヨーク州では違法で、患者に支払い義務はありません。医療機関でさえ法律を知らないことがあるので、厄介です。困ったときは、ジャパニーズSHAREにご相談ください。

Japanese SHAREで、ニューヨーク州政府のウェブページを日本語訳した「サプライズ・メディカル・ビル〜驚くべき高額医療請求書〜(ニューヨーク州金融監督局)。sharejp.org/blog/2020/9/22/ny

 

Q. その他の病院側の請求ミスは?

A. 

意図的ではないと思いますが、病院が同じ請求書を、保険会社と患者の両方に送ることはよくあります。まず保険会社に問い合わせ、「支払い済み」と言われたら、患者は払う必要はありません。

Q. 医療費を全く払えない人はどうしたらいいでしょうか?

A. 

在米日本人の中には、医療保険に非加入、違法滞在中、ソーシャルセキュリティー番号がないなど、問題を抱えている人も多いと思います。そういう人が病気やけがをした場合も、ちゃんと治療を受けられるのがアメリカです。緊急メディケイド(低所得者向けの公的医療保険)への加入手続きもできますし、どうしても払えない場合には、病院のソーシャルワーカに相談します。

 生活が困窮し、支払いが困難な場合でも、病院の経理担当者に相談をすれば、40%くらいは割引が可能になることがあります。一度に払えなければ、毎月50ドル、払い切るまで分割払いにするなど、手段はいくらでもあります。医療費には利子がつかないというのがわれわれの理解ですが、これについては病院でその都度確認が必要です。

Q. 「保険は?」と聞かれたらどう答えるべきですか?

A.

よく「エトナです」「ブルークロスです」と、保険会社の名前だけを答える人がいますが、これは車の修理屋さんから車種を聞かれて「黒い車です」と答えるようなものです。「エトナのPPOです」「ユナイテッドヘルスケアのHMOプランです」とか、どの保険会社のどのプランに入っているのかを、伝えてください。

 

 

 

 

Japanese SHARE
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写真:ブロディー愛子代表。
SHAREは、アメリカの乳がん・卵巣がん・子宮がん患者を支援するNPO。
ブロディーさんがSHAREの名の下に日本語プログラムを立ち上げたのが2013年。
ニューヨーク周辺を中心に在米日本人の患者を支援してきた。
今年夏、正式にSHARE日本語部門として認められ、カリフォルニア州にも日本人スタッフを常駐。
日本人が多く住む地域に重点を置きつつ、活動を全米に広げるために尽力中。

 

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