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メッツファン歴54年という強力なサポーター、マリヨン・ロバートソンさんと、ニューヨーク日系人草野球界の重鎮カセイ・チェンさんの二人に、メッツの魅力を語ってもらった。
Q:どういうきっかけでメッツファンに?
M:私は日本育ちのアメリカ人ですが、父親の赴任でNYに暮らすことになった1968年、たまたま観戦したメッツの試合に感動し、一目惚れして、以来、一貫してファンです。その頃は下手くそで「ひどいチーム。これなら俺にも入れそう」と思ったくらいですが、めきめき力をつけ69年にはワールドシリーズ初優勝。これを目の当たりにして、もう夢中になりましたね。
Q:同じNYの代表的チーム「ヤンキース」とは歴史も違く比較は難しいですが、かたやワールドシリーズ優勝27回。リーグ優勝40回。メッツは同2回と5回。90年代前半など全く勝てない時代もありました。それでも54年間、諦めずに「浮気」しなかった理由は?
M:ヤンキースの帽子かぶっている人を見ると「頭悪くなるぞ!」と忠告するんです(笑)。ヤンキースは勝たないとファンが怒る。メッツは負けてもファンは怒らない。自チームの選手をブーイングしたりしません。ヤンキースは勝つと「ヤンキー・マジック」と言うけど、メッツの場合は勝ったら「ミラクル・メッツ」。マジックとミラクル。人為的な勝利と神がかりの勝利、この違いです。
Q:負けても許せる贔屓のチームって、どういうことですか?
M:まあ、できの悪い子供、みたいなものですね。学校で「C」の成績取ってきても自分の子供だったら許せるでしょ?ずっと見てきて、過去の全選手について覚えていますから家族同然。あの球場でメッツのユニフォームを着て野球をやっているみんなの姿を観るのが楽しみなんです。
Q:そんなマリヨンさんの目で見た今年のメッツは?
M:いいと思います!ピート・アロンソ一塁手やジェフ・マクニール二塁手のような近年大活躍している生え抜き選手に、補強でベテランのジャスティン・バーランダー投手らが加わった布陣に、1984〜85年頃と同じ勢いを感じます。
当時もダリル・ストロベリー外野手のような若手に、キース・ヘルナンデス一塁手、ジョージ・フォスター外野手、ゲーリー・カーター捕手らベテランを他球団から補強したおかげで86年には108勝を達成してワールドシリーズも制覇しました。今年も100勝は確実でしょう。
Q:その補強選手の中に、日本のソフトバンクから移籍した千賀滉大投手が加入したことについては?
M:WBCに日本はベストの投手陣で臨みましたよね。アメリカは、第一線の投手は出してきませんでした。それが敗因です。つまり、日本の投手は技術的には世界一です。千賀選手もその一人。メッツの先発3番手として必ず活躍するでしょう。
ボビー・バレンタイン元メッツ監督と話したことがあるのですが、レギュラーシーズン150試合を戦う上で先発ピッチャーは登板32試合中、一番手が20勝、2番手が16勝、3番手は12勝すれば全季で90勝近くいけるのです。
千賀投手は32試合投げて12〜14勝は行って欲しい。行けると思う。今年の打線の応援があるなら絶対いけると思います。
Q:今年もシティフィールド球場に足を運びますね。
M:少なくとも10回は行くと思います。最近、リンドア選手を始めメッツは華やかなイメージになりましたからね。世界一は難しくても楽しい野球にしてくれることは間違いないしょう。
ちなみに、私があの球場の観客席で一番オススメするのは、内野オーナー席の真上のメザニン席中央です。値段も手頃でしかも全体が見えるから観戦にはベストですよ。
マリヨン・ロバートソンさん
1951年生まれ。
親の仕事の関係で日本ほか諸外国で育つ。
大手不動産会社役員の肩書をもち、MLB、特に日米野球交流に関わりが深く、ポスティング制度やWBC発足に尽力した。
2004年〜17年にはオリックスのアドバイザー並びに役員となり球団運営の中核を担った。
セミリタイアの今、夢はメッツWS優勝のみ。
「1986年の感激をもう一度!」
Q:現役選手のカセイさんからみて今季メッツは?
K:はっきり言って、打線は昨季とほとんど変化ありません。主砲ピート・アロンソ一塁手(131打点)を始め、昨季MLB最高打率(3割2分6厘)をマークしたジェフ・マクニール選手やブランドン・ニモ外野手らメッツ生え抜きの若手がとてもいいです。
またクリーブランドから移籍したフランシスコ・リンドア遊撃手も去年は大活躍(107打点)しており、昨季は101勝を達成したスーパー打線を築いています。これは問題ない。気になるのは投手陣です。
Q:ソフトバンクから海外フリーエージェント権を行使した千賀滉大投手が布陣に加わるので、日本人としてはワクワクしますね。
K:先発ローテーションを見ると、1、2番手はサイ・ヤング賞を3回獲得しているマックス・シャーザー(防御率3・11)と、去年のワールドシリーズ優勝の立役者でア・リーグ最多勝利賞とベスト防御率賞、サイ・ヤング賞という勲章の山を引っさげてアストロズから移籍してきた超優秀ベテランのジャスティン・バーランダーが務めるのでまず安心。
そして、3番手に昨季のクリス・バシットを放出して代わりに千賀投手を入れたのです。
Q:メッツが総額7500万ドルの破格金額で千賀選手を獲得した理由は?
K:彼独特のフォークボールでしょう。エンゼルスの大谷選手もそうですが、日本人投手はすごいフォークを投げます。アメリカでは「怪我をするから」と、フォークを教えない。そのためメジャーの打者はフォークが苦手です。打者の手元で激しく落ちるフォークはアメリカでは「魔球」として恐れられているのです。
「おばけフォーク」の異名をとる千賀投手の球がメッツは欲しかったのだと思います。今シーズンは「千賀がカギ」です。千賀の魔球を観に球場に行きましょう。
Q:プレイヤー目線でメッツから学ぶことは?
K:昨季から指揮をとるバック・ショーウォルター監督の野球術ですね。数多のチームを率いてきた名将だけにシーズン全体を見渡して非常に緻密にマネジメントしています。
例えば、開幕直前に期待の新人野手ブレット・バティとマーク・ビエントスを、マイナーに移しました。物議を醸しましたが、あれも、決して降格ではなく、前線選手の怪我に備えて、マイナーで毎日試合に出して、即戦力を養っているんです。そういう長期的な視野が、アマ野球のリーグでも非常に参考になるんです。
Q:カセイさん流のメッツ観戦術は?
K:私は中学生の時に1986年のワールドシリーズ優勝を観て感激して、そこからずっとメッツ・ファンです。クィーンズに住んでいますから、シティ・フィールド球場には思い立ったらふらっと出かけて、一番安いチケットを買って、席には座らず球場の中を移動しながら様々なアングルからメッツ野球を観戦するのが好きです。
カセイ・チェンさん
1973年生まれ。
小学生の頃から野球に親しむ。
運輸会社勤務のかたわら、2010年に日系人会(JAA)主催の「外務大臣杯軟式野球大会」リーグの強豪「じゃんくす」に加入。
捕手や監督で活躍し3度の優勝。
現在はプレイヤーでありながら副委員長としてリーグ運営の統括も務める。
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